【最新版】採用調査とは?費用から違法性、やり方まで人事担当者が知るべき全知識
採用候補者の経歴は本当に正しいのか、入社後に問題を起こすリスクはないかなど、採用における不安は尽きません。採用調査は、こうした採用リスクを低減し、ミスマッチを防ぐために極めて有効な手段です。一方で「費用が高いのでは?」「違法にならないか?」といった懸念から、導入をためらっている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。結論として、採用調査は候補者本人の同意を得るなど、適切な手順を踏めば合法的に実施できます。本記事では、採用調査の目的や具体的な調査項目、費用相場、個人情報保護法との関係性、合法的に進めるための具体的な流れや注意点、さらには信頼できる調査会社の選び方まで、採用調査に関する全知識を網羅的に解説します。この記事を読めば、明日からでも安心して採用調査を導入するための全てがわかります。
採用調査とは 採用リスクを低減するための重要なプロセス
採用調査とは、採用選考の過程で、候補者(応募者)が提出した履歴書や職務経歴書の内容に虚偽がないか、また、入社後に企業へ不利益をもたらすようなリスクを抱えていないかを、第三者機関を通じて確認する調査のことです。書類選考や面接だけでは見抜くことが難しい潜在的なリスクを可視化し、採用の意思決定を客観的な情報に基づいて行うために実施されます。
人材の流動化が進む現代において、優秀な人材の獲得競争が激化する一方、経歴詐称やコンプライアンス意識の欠如といった採用リスクも増大しています。採用調査は、こうしたリスクから企業を守り、健全な組織運営を維持するための重要な防衛策と言えるでしょう。
採用調査の目的は採用ミスマッチの防止
採用調査の最も重要な目的は、企業と候補者の「採用ミスマッチ」を未然に防ぐことにあります。採用ミスマッチは、早期離職の直接的な原因となり、企業に多大な損失をもたらします。具体的には、採用活動にかけたコストや時間、入社後の研修や教育に投じた費用が無駄になるだけでなく、欠員補充のための再募集、他の従業員の業務負担増加やモチベーション低下など、組織全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
採用調査を通じて、候補者の申告内容の真偽を確認し、過去の勤務状況や人物像を客観的に把握することで、自社の企業文化や求める人物像との適合性をより正確に判断できます。これは単なるネガティブチェックではなく、候補者が入社後に能力を最大限に発揮し、長期的に活躍できる環境であるかを見極めるための、双方にとって有益なプロセスなのです。
リファレンスチェックやバックグラウンドチェックとの違い
採用調査と混同されやすい言葉に「リファレンスチェック」や「バックグラウンドチェック」があります。これらは候補者について調べるという点では共通していますが、その目的、調査内容、手法において明確な違いがあります。自社の採用課題や目的に応じて、適切な手法を選択することが重要です。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
| 採用調査 | バックグラウンドチェック | リファレンスチェック | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | ネガティブチェック(経歴詐称、素行、反社関係等のリスク発見) | ファクトチェック(学歴、職歴、公的記録等の客観的な事実確認) | ポジティブチェック(実績、スキル、人柄等の魅力や適性の確認) |
| 主な調査内容 | 学歴・職歴の確認、前職での勤務態度や評判、破産歴、反社会的勢力との関わり、SNS調査など広範囲にわたる。 | 学歴・資格の証明、職歴の在籍確認、犯罪歴・破産歴などの公的記録の照会が中心。 | 候補者が推薦した前職の上司や同僚へのヒアリングを通じた、実績、スキル、チームでの役割、人柄などの確認。 |
| 主な情報源 | 公開情報、データベース、関係者への聞き込み(探偵業法に基づく)など。 | 各種データベース、教育機関、公的機関など信頼性の高い情報源。 | 候補者から指定された推薦者(前職の上司・同僚など)。 |
このように、採用調査はリスク排除の側面が強い一方、バックグラウンドチェックは客観的事実の確認、リファレンスチェックは候補者の活躍可能性を探る側面が強いという特徴があります。近年では、コンプライアンス遵守の観点から、客観的な事実確認を行うバックグラウンドチェックや、候補者のポジティブな側面を評価するリファレンスチェックを導入する企業が増加傾向にあります。
採用調査でわかること 具体的な調査項目を解説
採用調査と一言でいっても、その調査範囲は多岐にわたります。企業が抱える採用リスクに応じて、必要な項目を組み合わせて実施するのが一般的です。ここでは、採用調査によって具体的にどのような情報が明らかになるのか、主要な調査項目を詳しく解説します。
学歴や職歴の正当性
採用調査において最も基本的な項目が、候補者が提出した履歴書や職務経歴書に記載された内容の真偽を確認することです。悪意のある経歴詐称は、入社後のパフォーマンス不足や他の従業員への悪影響に直結する可能性があります。経歴詐称は、候補者の誠実さや倫理観を判断する上で重大な指標となるため、多くの企業が実施しています。
具体的には、以下のような項目について事実確認を行います。
| 調査項目 | 主な調査内容 | 発覚しうるリスク |
|---|---|---|
| 学歴 | 卒業した大学・学部・学科、卒業年月などが申告通りであるかを確認します。卒業証明書の提出を求めたり、学校へ直接問い合わせたりします(本人の同意が必要)。 | 最終学歴の詐称、有名大学への偽りの在籍など。 |
| 職歴 | 過去に在籍した企業名、在籍期間、役職、雇用形態などを確認します。在籍証明書の提出依頼や、前職・前々職への問い合わせ(リファレンスチェックと兼ねる場合もある)によって行います。 | 在籍期間の延長、役職の詐称、短期離職の隠蔽、非正規雇用を正社員と偽るなど。 |
| 資格 | 業務に必要な免許や資格(語学、ITスキル、専門資格など)が実際に取得されているか、また有効期限が切れていないかを確認します。合格証や認定書の写しの提出を求め、発行元団体に照会することもあります。 | 未取得の資格を記載、失効した資格を有効と偽るなど。 |
前職での勤務態度や実績
書類や面接だけでは把握しきれない、候補者の「働きぶり」を客観的に把握するための調査です。主に、候補者の許可を得て前職の上司や同僚にヒアリングを行う「リファレンスチェック」という手法で実施されます。書類選考や面接だけでは見抜けない、候補者の実務能力や人間性を客観的に評価し、入社後のミスマッチを防ぐ上で極めて有効です。
この調査では、以下のようなリアルな情報を得ることができます。
- 勤務態度:遅刻や欠勤の頻度、業務への意欲、責任感、報告・連絡・相談の徹底度など、社会人としての基本的なスタンス。
- 実績・スキル:職務経歴書に記載された実績の具体性や貢献度、周囲からの評価、専門スキルのレベル。
- 人物像・協調性:チーム内でのコミュニケーションスタイル、リーダーシップ、後輩指導の様子、上司や同僚との関係性。
- 退職理由:候補者本人が語る退職理由と、周囲が認識している退職理由に大きな乖離がないか。
- コンプライアンス意識:情報管理の徹底度やハラスメントに関するトラブルの有無など。
反社会的勢力との関わり(反社チェック)
企業のコンプライアンス遵守と社会的信用の維持のため、今や不可欠となっているのが反社チェックです。候補者本人やその関係者が、暴力団をはじめとする反社会的勢力と関わりがないかを調査します。万が一、関わりのある人物を採用してしまった場合、企業は計り知れないダメージを被る可能性があります。
調査は、専門の調査会社が保有するデータベースや、公的機関が公開している情報、過去の新聞記事などを横断的にスクリーニングして行われます。反社チェックは、企業を不当要求や風評被害といった深刻な経営リスクから守るための必須の防衛策と言えます。採用候補者だけでなく、取引先の与信調査においても広く実施されています。
SNS調査で判明する私生活でのリスク
近年、採用調査の項目として重要度を増しているのが、X(旧Twitter)やFacebook、InstagramといったSNSの調査です。候補者が公開している投稿内容から、その人物の倫理観や情報リテラシー、潜在的なリスクを把握することを目的とします。鍵付きのアカウントを不正な手段で閲覧することは違法ですが、公開されている情報から人物像を推察することは可能です。
SNS上の言動は、候補者の倫理観や情報リテラシー、さらには企業文化との適合性を判断する重要な材料となり得ます。
| 調査項目 | 確認するリスクの例 |
|---|---|
| 投稿内容 | 差別的・誹謗中傷・攻撃的な発言、過度に政治的・宗教的な投稿、公序良俗に反する内容、機密情報や個人情報の漏洩につながる投稿。 |
| 交友関係・所属コミュニティ | 反社会的なコミュニティへの所属や、問題のある人物との交流。 |
| 生活態度 | 頻繁な深夜の活動や過度な飲酒など、自己管理能力や勤務態度を疑わせる投稿。 |
これらの調査を通じて、面接の場では見せない候補者の一面を知ることで、将来のレピュテーションリスクを未然に防ぐことにつながります。
採用調査を実施するメリットとデメリット
採用調査は、採用候補者の経歴や人物像を客観的に把握し、採用のミスマッチを防ぐための重要なプロセスです。しかし、導入にはメリットだけでなく、注意すべきデメリットも存在します。ここでは、採用調査を実施することで企業が得られる具体的な利点と、導入前に理解しておくべき課題について詳しく解説します。双方を天秤にかけ、自社にとって最適な採用戦略を検討しましょう。
採用調査の3つのメリット
採用調査を適切に活用することで、企業は「採用の精度向上」「組織の安定化」「企業防衛」という3つの大きなメリットを享受できます。単に候補者をふるいにかけるだけでなく、より良い組織作りへと繋がる戦略的な一手となり得るのです。
メリット1 経歴詐称の発見
書類選考や面接だけでは、候補者が申告する学歴、職歴、資格、実績のすべてが真実であるかを見抜くことは困難です。採用調査では、公的記録の確認や前職への問い合わせを通じて、これらの情報の裏付けを取ることができます。虚偽の申告や重大な経歴の誇張を未然に防ぐことは、公正な採用活動の根幹をなします。能力や経験が不足している人材を誤って採用してしまうと、入社後のパフォーマンス不足はもちろん、教育コストの増大や、他の従業員の士気低下を招く原因にもなりかねません。客観的な事実に基づいて候補者を評価することで、採用の透明性と信頼性を高めることができます。
メリット2 組織風土とのミスマッチ防止
どんなに優れたスキルや輝かしい実績を持つ人材でも、企業の文化や価値観、働き方に馴染めなければ、早期離職につながる可能性が高まります。採用調査におけるリファレンスチェックなどを通じて、前職での勤務態度やチーム内でのコミュニケーションスタイル、仕事への取り組み方といった定性的な情報を得ることが可能です。これにより、候補者の人柄や価値観が自社の組織風土と合致するかを多角的に判断でき、入社後の定着率向上とエンゲージメントの最大化が期待できます。スキルフィットだけでなく、カルチャーフィットを重視した採用は、長期的に見て組織全体の生産性を高める重要な要素です。
メリット3 企業のレピュテーションリスク回避
従業員一人の不祥事が、企業全体の社会的信用を大きく損なうケースは後を絶ちません。採用調査は、こうしたレピュテーションリスクから企業を守るための防衛策としても極めて有効です。特に、反社会的勢力との関わりをチェックする「反社チェック」や、過去の犯罪歴、重大なコンプライアンス違反の有無などを調査することで、企業に深刻なダメージを与えかねない人物の採用を回避できます。また、SNS調査によって候補者の私生活におけるリスクを把握することも可能です。問題のある人材の採用が引き起こすブランドイメージの毀損や、取引停止といった経営リスクを未然に防ぐことは、企業の持続的な成長に不可欠です。
採用調査の2つのデメリットと注意点
採用調査には多くのメリットがある一方で、導入に際しては無視できないデメリットも存在します。特に「コスト」と「候補者への印象」という2つの側面を十分に理解し、対策を講じながら慎重に進める必要があります。
デメリット1 費用と時間がかかる
採用調査を外部の専門会社や探偵事務所に依頼する場合、当然ながら費用が発生します。また、調査には一定の期間を要するため、採用プロセス全体のリードタイムが長くなる可能性があります。特に、迅速な人材確保が求められるポジションでは、この時間的制約が大きな課題となることもあります。
採用コストとスケジュールのバランスを考慮し、どのポジションの候補者に対して、どこまでの範囲の調査を行うかを事前に明確に定義しておくことが重要です。例えば、全候補者に一律で実施するのではなく、役員や管理職、機密情報を取り扱う職種などに限定して実施するといった運用が考えられます。
| 調査内容の例 | 一般的な費用感 | 一般的な所要期間 |
|---|---|---|
| 経歴・学歴の正当性確認 | 3万円~8万円程度 | 3営業日~1週間程度 |
| リファレンスチェック | 5万円~10万円程度 | 5営業日~2週間程度 |
| 反社チェック・SNS調査 | 1万円~5万円程度 | 1営業日~5営業日程度 |
※上記はあくまで一般的な目安であり、調査会社や調査の深度によって変動します。
デメリット2 候補者にネガティブな印象を与える可能性
採用調査を行う旨を伝えた際、候補者によっては「自分は信頼されていないのか」「プライバシーを侵害されるのではないか」といった不信感や不安を抱くことがあります。伝え方やタイミングを誤ると、企業の印象を損ね、内定承諾率の低下を招きかねません。
このリスクを回避するためには、なぜ調査を実施するのか、その目的(例:入社後のミスマッチを防ぎ、候補者自身にも長く活躍してもらうため)を丁寧に説明し、真摯に本人の同意を得るプロセスが不可欠です。調査はあくまで客観的な事実確認であり、候補者を疑うためのものではないという姿勢を明確に伝えることが、信頼関係を損なわないための鍵となります。この同意取得のプロセスを誠実に行うことで、逆に企業のコンプライアンス意識の高さを示す機会とすることもできるでしょう。
採用調査の費用相場 依頼先と調査内容による違い
採用調査にかかる費用は、依頼先や調査内容の範囲によって大きく変動します。主な依頼先としては「探偵事務所・興信所」と「採用調査専門の会社」の2つに大別され、それぞれ費用体系や得意な調査領域が異なります。自社が求める調査レベルと予算を照らし合わせ、最適な依頼先を選ぶことが重要です。
ここでは、それぞれの依頼先における費用相場と特徴について詳しく解説します。
探偵事務所や興信所に依頼する場合の費用
探偵事務所や興信所は、個人の行動調査や身辺調査を専門としており、その一環として採用調査も請け負っています。費用は調査員の稼働時間や日数に応じて算出される「時間料金制」が一般的で、これに交通費や通信費などの実費が加算されます。
具体的な費用相場は、調査員1名あたり1時間8,000円~15,000円程度が目安です。例えば、前職での風評や勤務態度を探るために聞き込み調査を行う場合、数日間の調査で10万円~30万円程度かかるケースが多く見られます。
尾行や張り込みといった物理的な調査が必要な場合や、調査範囲が広範囲にわたる場合は、費用が50万円以上になることも珍しくありません。採用候補者のプライベートな側面に踏み込んだ調査を得意としますが、採用に特化しているわけではないため、ビジネス面での実績やスキルの評価には向かない場合があります。
| 調査内容 | 費用相場 | 調査期間の目安 |
|---|---|---|
| 経歴・職歴の裏付け調査 | 5万円~15万円 | 3日~1週間 |
| 前職での評判・勤務態度の聞き込み | 10万円~30万円 | 5日~2週間 |
| 素行調査(行動確認など) | 20万円~50万円以上 | 1週間~ |
※上記はあくまで目安であり、調査の難易度や地域によって費用は変動します。
専門の調査会社に依頼する場合の費用
近年、採用調査の主流となっているのが、コンプライアンスを重視し、採用に特化した調査を行う専門会社です。これらの会社は「リファレンスチェック」や「バックグラウンドチェック」といったサービス名で提供していることが多く、候補者1名あたりで料金が設定されている「パッケージ料金制」が一般的です。
費用は調査項目によって異なり、基本的な経歴の確認だけであれば3万円程度から、推薦者へのヒアリングや反社チェック、SNS調査などを加えると5万円~15万円程度が相場となります。探偵事務所と比べて費用を抑えやすく、かつ個人情報保護法などの法令を遵守した合法的な調査を安心して依頼できる点が大きなメリットです。
また、多くの専門会社では、企業のニーズに合わせて調査項目をカスタマイズできるプランを用意しています。例えば、「マネージャークラスの採用では詳細なリファレンスチェックを追加する」「顧客情報を取り扱うポジションでは破産歴の確認を行う」といった柔軟な対応が可能です。
| 調査項目 | 費用相場 | 主な調査内容 |
|---|---|---|
| 基本スクリーニング | 2万円~5万円 | 学歴、職歴の在籍確認 |
| リファレンスチェック | 5万円~10万円 | 前職の上司や同僚へのヒアリング(実績、人柄など) |
| 反社チェック | 1万円~3万円 | 公的データベースや報道記事データベースの照会 |
| SNS調査 | 3万円~6万円 | 公開されているSNS投稿内容からのリスク分析 |
| フルパッケージ | 8万円~15万円 | 上記項目を網羅した総合的な調査 |
このように、依頼先によって費用体系や調査の特色が大きく異なります。採用リスクを低減するという目的を達成するために、どのレベルの調査が必要かを明確にし、予算と照らし合わせて最適なサービスを選択することが肝要です。
採用調査は違法?合法的に実施するための法的根拠と注意点
採用調査を検討する上で、人事担当者が最も懸念するのが「法的な問題はないのか?」という点でしょう。結論から言えば、採用調査は適切な手順と配慮のもとで実施すれば、違法ではありません。しかし、やり方を一歩間違えれば個人情報保護法違反や就職差別につながる重大なリスクをはらんでいます。ここでは、採用調査を合法的に実施するための法的根拠と、絶対に遵守すべき注意点を詳しく解説します。
採用調査と個人情報保護法の関係
採用調査は、候補者の個人情報を取得・利用する行為であるため、個人情報保護法の規制対象となります。この法律の基本的な考え方は「個人情報を本人の同意なく、目的外に利用したり第三者に提供したりしてはならない」というものです。
採用調査で得られる経歴や勤務態度の情報は「個人情報」に該当します。さらに、思想・信条、病歴、犯罪歴といった特に配慮が必要な情報は「要配慮個人情報」と定義されており、これらの情報を取得する際は、原則としてあらかじめ本人の明確な同意を得ることが法律で義務付けられています。つまり、候補者本人から適切な同意を得ずに調査会社へ個人情報を提供し、調査を依頼することは個人情報保護法に抵触する可能性が極めて高いと認識しておく必要があります。
採用調査で違法となる可能性のあるケース
合法的に採用調査を行うためには、どのような行為が「違法」と判断されるのかを正確に理解しておくことが不可欠です。主に以下の3つのケースが違法性を問われる典型的な例です。
| 違法となる可能性のあるケース | 具体的な内容と調査項目例 | 関連する法律・指針 |
|---|---|---|
| 本人の同意なき調査の実施 | 候補者に知らせずに、秘密裏に興信所や調査会社に依頼し、前職の同僚や上司に聞き込みを行う、SNSアカウントを特定して投稿内容を閲覧するなど。 | 個人情報保護法 |
| 就職差別につながる情報の収集 | 業務遂行能力と無関係で、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報を収集すること。 【収集が禁止されている項目例】
|
職業安定法、厚生労働省「公正な採用選考の基本」 |
| プライバシーを侵害する調査手法 | 候補者を尾行する、張り込みを行う、ゴミを漁る、偽計を用いて情報を聞き出すといった、社会通念上、許容される範囲を逸脱した調査手法を用いること。 | 探偵業法、ストーカー規制法、プライバシー権の侵害(民法) |
特に、厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」では、採用選考は応募者の基本的人権を尊重し、適性と能力に基づいて行うべきであると明記されています。採用調査の目的はあくまで「採用リスクの低減」であり、候補者の思想やプライベートを暴き、それによって採否を判断することは決して許されません。
候補者本人から同意を得る重要性
採用調査における法的リスクを回避するための最大の防御策は、「候補者本人から、調査実施に関する明確な同意を書面で得ること」です。同意を得ることは、個人情報保護法を遵守する上で必須のプロセスであると同時に、企業と候補者との間の信頼関係を構築する上でも極めて重要です。
同意を得る際は、口頭ではなく、後々のトラブルを避けるためにも必ず「同意書」を作成し、署名・捺印をもらうようにしましょう。同意書には、以下の項目を明記する必要があります。
- 採用調査を実施する目的
- 調査を依頼する会社名(調査主体)
- 調査する個人情報の具体的な項目(例:職歴、実績、勤務態度など)
- 調査の方法(例:前職の上司・同僚へのリファレンスチェック、公開情報の確認など)
- 調査結果を選考目的のみに利用すること
- 同意は任意であり、同意しないことによる直接的な不利益はないこと
同意取得のタイミングは、内定直前や最終面接の前後が一般的です。候補者に対して、なぜ調査が必要なのか(例:「入社後のミスマッチを防ぎ、長く活躍していただくためです」など)を誠実に説明し、納得の上で同意を得るプロセスを徹底してください。万が一、候補者が同意を拒否した場合、それを理由に直ちに不採用とすることは望ましくありません。しかし、企業側としては経歴の正当性を確認できず、採用リスクを判断できないため、結果として選考プロセスを続行することが困難になる場合がある、という点は理解しておく必要があります。
採用調査のやり方と具体的な流れ
採用調査を導入するにあたり、その具体的な進め方を理解しておくことは、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな選考プロセスを実現するために不可欠です。ここでは、採用調査を「いつ」「どのように」行えばよいのか、4つのステップに分けて具体的に解説します。コンプライアンスを遵守し、候補者との信頼関係を損なわないための重要なポイントを押さえていきましょう。
STEP1 調査会社の選定
採用調査を実施する最初のステップは、信頼できる調査会社を選定することです。どの会社に依頼するかによって、調査の品質、範囲、費用、そしてコンプライアンス遵守のレベルが大きく異なります。自社の採用課題や求める人物像に合わせて、最適な調査プランを提案してくれるパートナーを見つけることが成功の鍵となります。
選定にあたっては、複数の調査会社から見積もりやサービス内容の提案を受け、比較検討することが推奨されます。その際、以下の点を確認しましょう。
- 調査可能な項目の範囲と深さ
- 個人情報保護法や各種法令を遵守した調査手法であるか
- 報告書のサンプルやクオリティ
- 調査期間と費用の体系
- 過去の実績や得意とする業界
どの範囲まで調査を行うかを事前に社内で明確にしておくことで、調査会社の選定やその後の依頼が円滑に進みます。
STEP2 候補者からの同意取得
採用調査の全プロセスにおいて、最も重要かつ不可欠なステップが「候補者本人からの同意取得」です。個人情報保護法では、本人の同意なく第三者から個人情報を取得することは原則として禁じられています。同意を得ずに調査を進めた場合、違法行為とみなされ、企業の信用を著しく損なうリスクがあります。
同意は必ず書面(同意書)で取得してください。口頭での同意は「言った・言わない」のトラブルに発展する可能性があるため、記録として残る形式が必須です。
同意を取得するタイミングは、一般的に最終面接の前後や内定を出す直前の段階が適切とされています。選考の初期段階で同意を求めると、候補者に過度なプレッシャーや不信感を与え、応募辞退につながる可能性があるためです。
同意書には、以下の項目を明確に記載する必要があります。
| 記載項目 | 内容のポイント |
|---|---|
| 調査の目的 | 採用選考のため、経歴等に虚偽がないかを確認する目的である旨を記載します。 |
| 調査会社の名称 | 調査を委託する第三者(調査会社)の名称を明記します。 |
| 調査する個人情報の内容 | 学歴、職歴、反社チェックなど、具体的にどの項目を調査するのかを漏れなく記載します。 |
| 調査結果の利用目的 | 取得した情報を採用選考の判断材料としてのみ利用し、他の目的には利用しないことを明記します。 |
| 同意が任意であること | 調査への同意は任意であり、同意しないことによって直ちに不利益な扱いを受けない旨を記載します。 |
候補者が同意を拒否した場合、それを理由に不採用とすることはできません。ただし、経歴の正当性を確認できないため、選考プロセスを先に進めることが難しい、と丁重に説明することは可能です。
STEP3 調査の依頼と実施
候補者から署名済みの同意書を取得したら、選定した調査会社に正式に調査を依頼します。この際、候補者の同意書(コピーまたは原本)と、調査に必要な情報(氏名、生年月日、履歴書・職務経歴書など)を調査会社へ提出します。
依頼を受けた調査会社は、同意書に記載された範囲内で調査を開始します。調査手法は、公開情報の確認、データベース照会、関係者へのヒアリング(リファレンスチェックの場合)など多岐にわたります。調査にかかる期間は、調査内容や対象者によって異なりますが、一般的には依頼から5営業日〜2週間程度が目安です。
調査期間中、企業側(人事担当者)は基本的に調査会社からの報告を待つことになります。進捗状況について不明な点があれば、適宜コミュニケーションを取り、状況を確認しましょう。
STEP4 調査報告書の受領と選考への活用
調査が完了すると、調査会社から詳細な「調査報告書」が提出されます。報告書には、依頼した各項目についての調査結果が事実に基づいて記載されています。例えば、職歴に相違があった場合はその内容、SNS調査で懸念される投稿が見つかった場合はその具体例などがまとめられています。
この報告書を選考に活用する際には、極めて慎重な判断が求められます。以下の点に十分注意してください。
- 事実確認の機会を設ける: 報告書に候補者の申告と異なる内容や懸念事項が記載されていた場合、その内容のみを根拠に即座に不採用を決定してはいけません。まずは候補者本人に面談などの場で事実確認の機会を設け、弁明や説明を聞く姿勢が重要です。
- 客観的な事実と評価を区別する: 報告書はあくまで客観的な事実をまとめたものです。その事実をどう評価し、採用判断に結びつけるかは、全面的に企業の責任となります。
- 採用基準との照合: 調査結果は、自社が定める採用基準や就業規則と照らし合わせて、総合的に判断するための「参考情報」として位置づけましょう。例えば、軽微な経歴の齟齬が、業務遂行能力に本質的な影響を与えないと判断できるケースもあります。
- 差別に繋がる判断の回避: 調査によって判明した本人の思想・信条やプライベートな情報などを理由に不採用とすることは、就職差別に繋がりかねません。あくまで業務遂行に関連する客観的なリスク評価に留める必要があります。
採用調査は、あくまで採用ミスマッチを防ぎ、健全な組織運営を守るためのツールです。調査結果を公正かつ慎重に取り扱い、候補者の人権にも配慮した上で最終的な採用判断を下すことが、企業のコンプライアンスと社会的信頼を維持するために不可欠です。
おすすめの採用調査会社と選び方のポイント
採用調査の重要性を理解しても、どの調査会社に依頼すれば良いか迷う人事担当者の方は少なくありません。調査会社によって得意分野や料金体系は大きく異なり、自社の目的に合わない会社を選んでしまうと、期待した成果が得られないばかりか、無駄なコストが発生してしまいます。ここでは、自社に最適な採用調査会社を選ぶための具体的な基準と、実績豊富な代表的な企業をご紹介します。信頼できるパートナーを見つけ、採用リスクを効果的に低減させましょう。
採用調査会社の選び方3つの基準
数ある調査会社の中から、自社のニーズに合致した一社を選び抜くためには、明確な基準を持つことが不可欠です。以下の3つのポイントを総合的に評価し、慎重に比較検討することをおすすめします。
基準1 調査範囲とコンプライアンス遵守
まず確認すべきは、自社が求める調査項目をカバーしているか、そして法令を遵守した適切な手法で調査を行っているかです。例えば、SNS調査に特化した会社、反社チェックに強みを持つ会社、リファレンスチェックを専門とする会社など、各社には得意分野があります。自社の採用課題に合わせて、必要な調査項目を過不足なく提供してくれる会社を選びましょう。
また、個人情報保護法や職業安定法などの関連法規を深く理解し、候補者のプライバシーに最大限配慮した調査プロセスを確立しているかは、企業のレピュテーションを守る上で極めて重要です。プライバシーマーク(Pマーク)の取得状況や、調査における候補者からの同意取得プロセスが明確であるかを確認してください。
基準2 調査の品質と実績の信頼性
調査の品質は、採用の成否を左右する重要な要素です。長年の業界経験や豊富な調査実績を持つ会社は、多様なケースに対応できるノウハウを蓄積しています。企業の公式サイトで、導入実績(企業数や業界)、創業年数、調査員の専門性などを確認し、信頼性を判断しましょう。
特に、調査報告書(レポート)の質は重要です。単に事実を羅列するだけでなく、採用判断に資する客観的な分析や示唆が含まれているか、事前にサンプルを見せてもらうと良いでしょう。情報の正確性はもちろん、報告のスピード感も選考プロセスに影響するため、標準的な納期(TAT:ターンアラウンドタイム)も確認すべきポイントです。
基準3 料金体系の明確さと費用対効果
採用調査には一定のコストがかかるため、料金体系の明確さは必須の確認項目です。基本料金でどこまでの調査が含まれるのか、追加調査にはどのような費用が発生するのかを事前に詳しく確認し、見積もりを取りましょう。複数の会社から見積もりを取得し、サービス内容と料金を比較検討することで、自社の予算に合った最適なプランを見つけることができます。
ただし、単に料金の安さだけで選ぶのは危険です。安価な調査は、調査項目が限定的であったり、情報の精度が低かったりする可能性があります。調査によって得られるリスク回避の効果(経歴詐称の防止、ミスマッチの低減など)を考慮し、費用対効果の高いサービスを選ぶ視点が重要です。
実績が豊富な採用調査会社3選
ここでは、上記で解説した選び方の基準を満たし、国内で豊富な実績と高い信頼性を持つ代表的な採用調査会社を3社ご紹介します。各社の特徴を比較し、自社のニーズに最も適した会社を見つけるための参考にしてください。
| 会社名 | 主な特徴 | 強みのある調査項目 | こんな企業におすすめ |
|---|---|---|---|
| 株式会社シエンプレ | Webリスク対策の専門家集団。SNS調査に圧倒的な強みを持つ。 | SNS調査(Sトク)、反社チェック、ネット上の風評調査 | 候補者の私生活でのリスクやネットリテラシーを重視する企業。特に若手採用が多い企業。 |
| 産労総合研究所 | 1938年創業。人事労務分野の調査・研究における老舗。信頼性が非常に高い。 | バックグラウンドチェック全般、リファレンスチェック、学歴・職歴調査 | 経営幹部や専門職など、特に重要なポジションの採用で、網羅的かつ信頼性の高い調査を求める企業。 |
| 株式会社企業調査センター | 探偵業法に基づく調査会社。行動調査など、より踏み込んだ調査にも対応可能。 | 反社チェック、勤務態度調査、風評調査、行動調査 | 金銭を扱う職種や、高い倫理観が求められるポジションで、より深掘りした調査を必要とする企業。 |
株式会社シエンプレ
株式会社シエンプレは、デジタルリスク対策の専門企業として、特にSNS調査の分野で高い評価を得ています。同社の「Sトク」は、専門のアナリストが候補者のSNS投稿内容を分析し、情報漏洩リスクや不適切な言動、経歴との矛盾点などを可視化するサービスです。採用候補者のネットリテラシーや潜在的なリスクを把握したい企業にとって、非常に有効な選択肢となります。反社チェックやネット上のネガティブな評判調査も手掛けており、オンライン上のリスク対策を包括的に行いたい企業に適しています。
産労総合研究所
産労総合研究所は、長年にわたり人事労務分野に特化してきた調査・研究機関です。その歴史と実績に裏打ちされた信頼性は業界でもトップクラスであり、特に管理職や役員クラスといった重要なポジションの採用において、多くの企業から支持されています。調査は、学歴や職歴の確認といった基本的なバックグラウンドチェックから、前職での実績や人物像を把握するリファレンスチェックまで幅広く対応。法令遵守を徹底した丁寧な調査プロセスと、客観的で質の高い報告書に定評があります。
株式会社企業調査センター
株式会社企業調査センターは、探偵業の届出を行った上で、企業向けに特化した調査サービスを提供しています。一般的なバックグラウンドチェックや反社チェックに加え、必要に応じて候補者の勤務態度や素行に関する内偵調査(行動調査)といった、より踏み込んだ調査に対応できる点が大きな特徴です。コンプライアンスを最重要視し、候補者本人の同意を前提とした合法的な範囲での調査を実施します。特に金融機関や警備会社など、従業員に極めて高い信頼性や倫理観が求められる業界・職種での採用に適しています。
まとめ
本記事では、採用調査の概要から具体的な調査項目、費用、そして合法的な実施方法に至るまで、人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説しました。採用調査は、候補者の経歴詐称を見抜き、組織風土とのミスマッチを防ぐことで、採用リスクを大幅に低減させるための重要なプロセスです。
採用調査を実施する上で最も重要な結論は、必ず「候補者本人から明確な同意を得る」ことです。個人情報保護法の遵守は絶対であり、同意なく調査を進めることは違法となるリスクを伴います。費用や時間がかかるというデメリットはありますが、企業のレピュテーションを守り、健全な組織を構築するためには不可欠な投資と言えるでしょう。
採用のミスマッチは、早期離職や生産性の低下など、企業に多大な損失をもたらします。本記事で解説したポイントを踏まえ、信頼できる調査会社を選定し、適切な手順で採用調査を実施することで、貴社の持続的な成長に繋がる優秀な人材の確保を実現してください。
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